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2010/08/22 (Sun)

『ひみつのへや』





いつもここに来るたびに、

気になっている部屋があった。




大人たちは、皆いそいそとその部屋に入っていく。

でも、そのくせ部屋から出てくる時は、死にそうな顔をしている。

あの部屋の中で、一体なにが行われているんだろう。




ドアには窓がついているけれど、

ボクの身長ではのぞけない。




ボクがその部屋に近づくと、ママは怒るんだ。

ボクにはまだ早いんだって。




でも、ダメだって言われたら、よけいに気になる。

ボクは、ママの目を盗んで その部屋に近づくと

見つからないように急いでドアを開けて、部屋に入った。





ボクをチラリと一瞥して再び目を閉じる人。

眉間にシワを寄せて、苦悶の表情を浮かべる人。

一点を見つめたまま、放心状態の人。





ボクは体中がカァ~ッと熱くなった。

今までに見たことのない光景と

その部屋の、むせ返るような重たい空気に。





顔を赤くして立っているボクに、

見知らぬオバさんが近づいて来た。

「ぼうや、一人?」




いきなり話しかけられ、ドギマギしていると

後ろのドアが開いて、慌てた様子のママが入ってきた。





「コラッ!ここは子供が入る場所じゃないのっ!!出なさいっ!!」

怒ったママに腕を掴まれ、ボクはあっという間に その部屋から放り出された。






ママは、皆あれを楽しみに来てるって言うけど、本当かなぁ?

あの部屋の中では誰も笑ってなかったし、タオル一枚でジッと座ったままだ。

熱い中、汗まみれで、みんな苦しそうな顔をしてた。





苦しいのが楽しいのかなぁ?

大人って変な生き物だ。






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2010/04/18 (Sun)

『 走り屋 』



ハンドルを握ると、昔の感覚が蘇ってくる。

こう見えて、若い頃は 「峠の狼」 なんていう呼び名まで付いていて、

巷では有名な走り屋だった。




結婚し、子供が出来てからは落ち着いていたのだが

コイツに出会って、俺は再び車の魅力に取り付かれ、

それ以来、いくらつぎ込んだか分からない。




当然、妻は快く思っていないだろう。

「いい歳をして」 と、最近では呆れ顔だ。

でも、他にこれといった趣味のない俺、これくらいは大目に見て欲しい。




体に伝わる振動、耳に心地良い重低音。

俺は思いっきりアクセルを踏み込み、

他の車を一気に抜き去った。





「ちょっとー、オジサン!」

「・・・え?」

後ろから子供に声を掛けられ、我にかえった。





「後ろ、順番待ってるんだから交代してよ~

“連続プレイは禁止” って、そこに書いてあるじゃん!」





「ああ、ごめんごめん。ちょっと待って、すぐ代わるから。」

最近めっきり出てきた腹を揺らし、俺は備え付けのシートから降りた。




列の後ろに並び直すと、チラリと腕時計を見る。

「おっと、もうこんな時間か。あと2、3回乗ってから昼飯食いに帰るかな。」





休日、昼下がりのゲームセンターは大勢の親子連れで賑わっていた。





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2010/03/21 (Sun)

『 最期の時 』



まったく人間というのは残酷な生き物だ。

欲望のままに生き、僕らのことなんてこれっぽっちも考えてない。




ああ、体が重い。

最近一段と太ってきた気がする。

いや、人間に太らされているというべきか。




もうじき僕にも、その時がくるんだろう。

散々太らされた後、人間の為に散っていくのが僕らの定めなんだ。




仲間達は、そんなの昔の話だって笑うけど

実際自分がこういう立場になったら、笑ってられるはずないんだ。

覚悟はしてたつもりだけど、僕は恐ろしくて仕方なかった。




僕のそんな気持ちなんて、露ぞ知らない人間様がやって来て

僕を少し持ち上げると、満足そうに頷き、

そして、ニンマリと笑うとどこかへ駆けていった。




僕はアイツが大嫌いなんだ!

人間の子供ってヤツが一番残酷なんだ!




彼が戻ってきた時が僕の最期の時だろう。

きっと、彼は僕をバラバラにしてしまうんだ!

ああ、彼が戻ってきた!いよいよお別れの時だ!!





僕は一層、身を硬くして、すがる思いで神に祈った。

「アーメン!!!」





その瞬間、ポコンッとゴムのフタが取れる音がして

僕のお腹から100円玉がジャラジャラと音を立てて出て行った。






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2010/02/28 (Sun)

『主従』




僕がご主人様にお仕えするようになって、もう1年になる。



僕のご主人様は素晴らしい人だ。

こんな僕に、とても優しくしてくれる。




僕がまだ未熟な頃、ご主人様は一から色んな事を教えてくれた。

そんなご主人様の期待に応えようと、僕は一生懸命だ。




僕が頑張ると、ご主人様は僕に素敵な洋服や、

見たこともない装飾品をプレゼントしてくれる。

僕はその度に、力がみなぎり、一層ご主人様のために頑張れるんだ。




毎日会う友人達に色々話を聞いたけど、

僕のご主人様は気前が良い、と皆に羨ましがられた。




でも、僕はその分、死に物狂いで働いているもの。

実際、何度も危ない目にあったし、死にかけたことだってあるんだ。

その度に、ご主人様に助けてもらったけどね。




こんなご主人様だから、それはもう人気者なんだ。

毎日、ひっきりなしにご主人様のお友達がやってくる。

ご主人様は社交的で、どうやら女性にも人気があるらしい。




なのに、時々現れるご主人様のお母様は、ご主人様に向かって言うんだ。

「あんた、友達いないの?」 って。

ご主人様は世界中に友達がいるのに、おかしな事を言うよね。







カーテンを閉めきった6畳の部屋が、僕のご主人様のお城。

あまり外にも出掛けずに、一日中 僕の相手をしてくれる。




あ、そろそろ夜が明けそう。

ご主人様がお休みになる時間だ。

おやすみなさい、ご主人様。また後ほど お会いしましょう。




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「なかなかレベル上がんねぇな。新しい武器、装備させるかな。」

明け方の薄暗い部屋の中で、一人の男がそうつぶやくと

大あくびをしながら、パソコンの電源を静かに切った。







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2009/11/28 (Sat)

『告発のゆくえ』




一時期、相次いだ食品偽装のおかげで

食品加工会社を見る世間の目は、ずいぶんと厳しくなった。




偽装発覚の会社の中には、生産ラインの責任者が勝手に

偽装を行っていて、本社の上層部には寝耳に水のケースもあるようだ。




僕の勤める会社では、そんなケースに危機感を覚えてか、

ある日、本社から社員全員にこんなメールが送られてきた。





『昨今の食品偽装問題は、我が社にとっても他人事ではありません。

社員一人一人が会社への忠誠心を持ち、己の責務を全うするよう心掛けましょう。

もし、何らかの不正を発見した場合は、すみやかに本社まで連絡して下さい。』





文章の最後には、連絡先のメールアドレスが記載されていて

そのメールとともに、

「不正をいち早く本社に知らせた人には、金一封が贈られるらしい。」

という噂が社内を駆け巡った。





僕は興奮を覚えた。

実は、僕が配属されている加工工場では

もう何年も前から、「100%国産」 と偽って海外の安い原料を

大量に使用するという不正が行われていたのだ。





しかし、それを知っているのは僕だけではない。

工場で働くほとんどの人間が、見てみぬフリをしていた。

その不正を取り仕切っているヒステリックでワンマンな工場長に

恐れを成してのことだ。





この工場での不正を暴くことで、工場長を糾弾することができる。

長年、会社を裏切り続けてきたアイツに、やっと罰が下る時がきたのだ。

本社も、不正防止に本気で取り組んでいる様子だし。





会社への忠誠をアピールする絶好の機会、しかも金一封の臨時収入というおまけつき。

工場の同僚たちも、このチャンスを見逃すはずがない。

僕は、他の人間に先越されまいと急いで本社にメールを打ち始めた。







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・・・もうずいぶん長い距離を走っている気がする。

いや、真っ暗なトランクルームの中で、時間の感覚が狂っているだけなのか。

縛られた手足は、とうに感覚を失っていた。





ああ、もっと早く気付くべきだった。

あの不正が、工場長の独断ではなかったことを。

どうやら僕は、意味を履き違えていたようだ。





「会社への忠誠心」

薄れゆく意識の中で、メールの一文が頭をよぎった。








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